箕面滝道にある木造三階建ての旅館を店舗にリノベーション
箕面の駅を降りて山側に向かうと大阪市内から一番近い自然といわれる、箕面国定公園がある。休日にはその先の滝までの滝道で多くの人でにぎわう場所だ。今回はその滝道の中腹にある、明治から続く築100年を超す木造三階建ての旅館「橋本亭」の古民家コンバージョンの案件だ。築年数からくる風格、緑に包まれた立地、木造三階建てというスケール感からとても刺激的な案件だ。元々後継ぎ不在と、長く放置されていた物件だったが、いよいよ取り壊すかどうかが検討されたとき、その佇まいから市民や周辺事業者の惜しむ声もあって第三セクターが買い取り、古民家をリノベーションして複合商業施設として投資する政策がとられた。そのタイミングでSTUDIOM+と出会うことになった。現場調査でぐるぐると周囲を回る内、滝道を上流から降りてくると橋の向こうに建物がある構図に出会う。その川沿いにある窓際の席に人が座り、滝から下ってくる人と出会う。そんなイメージがデザインの始まりとなった。
磨き上げられた黄土漆喰が古民家から覗く
外壁はもともと土壁でボロボロだったものを、モルタル下地に艶消しグレーの塗装。窓はすべて昔の学校でみられたような擦りガラスで、中の状態を見ることも中から外の景色も見れなかった為、すべて透明ガラスに取り換えた。これは新緑の季節の写真だが、紅葉の時期にはこの窓ガラス一杯が映り込みによって真っ赤に染まる。下には川があり夏にはこの窓際の席が最高になる。
床に水墨画を描く
敷地に沿って台形に造られたこの木造建築は現在の建築基準法は立つことが不可能なものだった。その為構造的な解決から手をかけた。元々は旅館であったこともあり、まず玄関口の土間から和室に上がる床を全て解体しモルタルで固めていく。床下部分はさすがにシロアリによって食い尽くされていた為、接ぎ木や添え木シロアリ工事なども行う。天井や間仕切りも全て取り払い筋交いを入れ補強。駅方面から滝に上るお客さんに入口から窓際の風景が一面に見えるように考えられた。床はモルタルの上にアーティストによる柳の水墨画が掛かれ、元々和室であった部分は珍しいローズウッドの無垢フローリングが張られた。家具、什器はSTUDIOM+のオリジナルでウォールナットの柾目を使ったテーブル等で落ち着きにあるデザインと目指したものとなった。
この仕上げの中で一番の見せどころは壁面のレアな黄土漆喰の鏡面磨き。黄土を混ぜた漆喰を玉虫色になるまで磨き上げたものだ。磨きの回数が少ないと玉虫色にはならず淡い黄色のままとなる。
白い漆喰だと差別化が図れず土壁だと構造的にも弱くチープになる。そんな中での選択だった。外から見ると鈍い黄土の色がこの古い構造物をよりノスタルジックにしてることがわかる。2階はプラスター金鏝仕上げ。
古民家にモダンなアイテム
外部サインはSTUDIOM+によってデザインされたSUS切り文字とSUSコルトンBOX。和の建築にたいしてモダンなアプローチで魅せる。
窓際に座るととこんな景色が見られる。照明はパナソニック。 中から外を見る分には問題ないとのこともあって、外部からどう見えるかに絞って内に誘導するデザインが今回のテーマだった。
橋本亭10周年ノベルティバッグ
10周年を記念したノベルティも弊社が担当した。
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