大阪のゲストハウス デザインリノベーション
世界中のバックパッカーが集う場所として相応しい空間が今回の依頼。彼らの寝床であり、旅を語らう場所であり、仲間を見つける場所。それはクライアント自身が体験してきたそのものだった。その息遣いの感じられるような拠点を日本にも造りたい。世界中を旅する中で集めてきた画像を次々とめくりながら、私に説明してくれた。こんな、緩くてコミュニケーションが自然に生まれる空間を作ってほしい。
新聞屋だった一棟ビルをDIYでゲストハウスに
元々新聞屋だったものをゲストハウスへコンバージョンというプロジェクト。民泊やシェアハウスと違いゲストハウスを開業するにはいくつかのハードルがある。そのうちの一つが建築基準法にある旅館業法で耐火建築物とする要件だ。100㎡以上の特殊建築物の用途変更には建築確認申請が必要であり旅館業申請する場合耐火構造としなければならない、耐火構造とは要するに建築物が燃えないようにしなければならないということだが、これには主要構造部を不燃にする必要がありコストがとんでもなく掛かる。簡単にいうと鉄骨の梁に燃えないように石綿のようなものをつけたり、窓枠やガラスを燃えないようなものに取り換える必要があるのだ。(2019年6月27日改正があり200㎡以上に要件が緩和)
多くの開業希望の方が(単価の小さなゲストハウス開業では100㎡のスペースでは採算が合わなくなる)この要件で断念するが、今回はゾーニングとデザインで問題の解決を図り、コストの制約がありながらも100㎡以内で用途変更の必要のない形で旅館業法申請することを可能にした。2、3階部分を自宅にして、ベットを2段にし多くの集客を可能にしたことで、宿泊営業面積を1階の100㎡内に抑え、 階段部分の竪穴区画のみを準耐火仕様とすることで市役所の承諾をとることができたのだ。それでも竪穴区画の工事として防火扉やスラブまでの界壁、ボード2重貼りなどそれなりのコストを要した。
バックパッカーを刺激する赤い天井
2階は知り合いから格安で譲っていただいたパレットを流用してテーブルやベンチを制作。一枚40キロほどあるのでかなりの耐久性がある。
施主の希望する空気感を再現する為に塗られた赤い天井。これが意外と好評でこの空間では自然とテンションが上がる感じが分かる。他にも2階3階の住居部分にはいくつかのシャワールームや部屋があり今回のリノベーションで民泊設備として使用も可能にしている。
連続する個性
空間に斜めの筋交い形式の柱で2階部分の横軸と縦軸の加重を受けている。またトラス式構造をとり直行する部分をササラにして階段を設置、ヘッド側にパネルは構造を兼ねた目隠しとなり、それらすべての連続性がこの空間のデザインとなっている。
ベットはすべて12㎜か24㎜の構造合板で制作されており構造部以外は12㎜を使用しコスト削減が行われてた。
既製品で作れない空気感が今回のテーマ、ペンキやハンドサインでグローバルなバックパッカーの息遣いの表現を目指した。
トラス構造の部分は建築的でこのゲストハウスの個性。ビジネス的にも必要な強みだ。
女性客や家族も支持する空間
トラス構造の階段を上がった2階の様子。寝れば隠れる程度の腰壁とカーテンで間仕切る。日によって人種が入り混じるバックパッカーの宴会場と化すらしい。2階と違いこちらは水色の天井。
市内の四方囲まれたプライベート感のある個室と違い、フェリーの雑魚寝に近いバックパッカーのそれは、まるでコンセプトが違う。それでも、階段のピッチでモジュール化された寝室は、上2人と下2人もしくは4人という形式であれば最低限のプライバシーは守れる。女性客やカップル、家族での利用も多いそうだ。
裏にあったシャッタを解体してガラスFIX窓際に小さな和室を設けた。
デザインはコストを調整する
箱が大きく施工面積がそれなりにありゲストハウスやシェアハウスまた民泊などのデザインは、予算的な制約ある中で、どれだけ集客につながる個性を演出するかに掛かっている。数多くある競合相手のなかに埋もれてしまっては意味がないからだ。今回の成功への道は、DIYの知識や素材への探求心がアイデアの源となりクライアントとのコミュケーションがとても重要なファクターとなった。
オープンから数年後、様子を伺った。女性客やカップル、家族の利用もあり収益も順調のようで一安心だ。
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